「貴女はフェイト?」
「そう、私がフェイトよ。」
「じゃあ私はフェイトではないのかしら」
「いいえ、私と同様に貴女もフェイトだわ。」
「ちょっと待って、それじゃあフェイトが二人よ」
「あら、二人だとなにかいけないのかしら?」
「そりゃそうに決まっているじゃない。貴女も私もフェイトだなんてそんなのおかしいわ」
「なぜかしら?」
「それはフェイトが個を表す概念だからよ」
「個が複数あるのは問題?」
「それは個じゃないわ」
「それなら簡単なことよ。貴女は私なんだわ。」
「貴女が私ということは私は貴女?」
「そういうことになるわね。」
「いいわ、そういうことにしましょう」
「でもそうなると問題が出てくるわね。」
ええ、彼が愛しているのは、私かしら?それとも貴女?」
「どちらがお望み?」
「できることなら私であって欲しいわ」
「奇遇ね、私もよ。」
「さすが私ね」
「さすが私だわ。」
「でも彼が愛しているのはフェイトよ」
「それは私であり、貴女でもある。」
「貴女がいなくなったらフェイトは私なのかしら?」
「私がいなくなったら貴女もいなくなるんじゃなくって。」
「試してみる?」
「いやよ、恐ろしい。」
「存在が消え去るのが?」
「彼に愛してもらえなくなるのが。」
「同感だわ」
「彼のことが好きなのね。」
「貴女こそ」
「もしかしたらフェイトは集合概念なのかしら。」
「でもフェイトは個を内包している」
「私たちはフェイトだけど、フェイトは私たちじゃない。」
「つまり私たちは個じゃないのね」
「一要素に過ぎないんだわ。」
「なら私たち以外にもフェイトがいる可能性があるわね」
「探してみる?」
「もしそれでフェイトが見つかったのなら私たちの濃度が下がるんではなくて」
「認識の有無に関わらず濃度は一定よ。」
「意識の問題ね」
「でも、私たちが認識し意識することによって、私たち自身の持つ要素は変わらないのかしら。」
「それによって濃度が変化する?」
「ありえないことではないでしょう?」
「それで貴女の濃度が上がる場合、私の濃度が下がるということになるわね」
「あら、私がフェイトに近づいたわ。」
「それなら仮に貴女が100パーセントフェイトになった場合、私は消えるのかしら?」
「貴女が消えても私は消えていない。」
「貴女というフェイトが、フェイトになるのね」
「私がフェイトだわ。」
「その後、貴女というフェイトの中で、誰かが議論することもあるのかしら」
「それって貴女と私のことじゃない。」
「ということは私たちがいてもどこかに100パーセントのフェイトが存在するのね」
「じゃあ100パーセントのフェイトが二人になるのかしら?」
「その二人のフェイトが貴女と私かもしれないわね」
「私たちの下にフェイトがいて、私たちの上にもフェイトがいる。」
「フェイトは無限にいるのね」
「きっと無限という概念にすらフェイトは内在するわ。」
「この世界はフェイトで、フェイトこそこの世界なのね」
「ほら、フェイトがあそこを歩いてる。」
「ほら、フェイトが水に流されてる」
「ほら、フェイトが爆発した。」
「ほら、フェイトが変なホームページを作った」
「このフェイトの書いた文章はフェイトに伝わるのかしら?」
「大丈夫よ、みんなフェイトなんだから」
「そうね、きっと大丈夫だわ。」
「さあ寝ましょう、フェイト」
「お休みなさい、フェイト。」
「お休みなさい、フェイト」
「良い夢を、フェイト。」
「貴方こそ良い夢を、フェイト」